ITproEXPO 特別講演 全文書き起こし
IoT大航海時代の先駆け =SORACOMの戦略とお客様事例 =
株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川憲


AGENDA:

  • IoTに最適な通信とは?
  • ウェブとAPIで通信回線の一括管理が可能
  • SORACOMのサービス提供の仕組み
  • さまざまな業界のSORACOM利用事例
  • IoTをまずやってみる、トライアルや研究開発での利用
  • イノベーションで社会を変革するスタートアップでの利用
  • ソラコムの戦略(1)運用コストを削減し、お客様に低料金で還元
  • ソラコムの戦略(2)お客様のニーズに基づいた迅速なサービス開発
  • ソラコムの戦略(3)新テクノロジーを、すぐに使える形で提供
  • ソラコムの戦略(4)グローバルなプラットフォーム展開
  • ソラコムの戦略(5)エコシステムを重視
  • 世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ

IoTに最適な通信とは?

 みなさまこんにちは。SORACOMの玉川です。SORACOMは、まだ創業2年ほどの会社ですが、グローバル向けにIoT/M2Mの通信プラットフォームを提供している会社です。


 今回のタイトルでIoT大航海時代というふうに表現させていただきました。クラウドをはじめ、テクノロジーが整ってきて、今後、数百億のものがクラウドに直結していくだろうということが予測されています。このIoTに対してみなさまと同様に期待を感じるとともに、IoTを実践していこうとすると、たくさんの課題があることも感じております。


 特にこのインターネット接続、通信のところに課題があると感じていました。従来使われてきた方法である有線LANやWi-Fiは、セキュリティの問題があったり、接続できる場所が限られれたりします。私達は、IoTの通信には、「モバイル通信」がいいだろうと考え、昨年の9月30日に、このモノ向けの通信サービス「SORACOM Air」を発表しました。


 実は、昨年のITpro EXPO2015の初日、特別講演で、このSORACOMを初めて発表させていただきました。おかげさまで、昨年はITproEXPO Award 2015大賞ををいただき、多くの注目をいただきました。

ウェブとAPIで通信回線の一括管理が可能

 はじめに出した「SORACOM Air」は、データ通信SIMを提供して、モバイル通信を提供するサービスです。ただ単にモバイル通信ができるだけではなくて、このSIMカードを挿していただくと、ウェブ(ブラウザ)上から、いつでも回線、端末を管理できるようになっています。

 管理画面の、一行一行、これがそれぞれのSIMカードです。このSIMカードを利用開始したり、止めたり、速度を変えたり、どれぐらいのデータ量を使っているかリアルタイムで把握したり、接続状況を表すセッション情報を見ることができたり、全て一括管理できます。なおかつ、ウェブ上で管理できるだけではなく、数千、数万のモノを管理するのは大変なので、APIを提供してプログラムからも管理できるようになっています。SORACOMのSIMのアクティベート、利用開始、解約、こういったことも数万回線まとめて一気にプログラムで管理できるようになっています。


 つまり、このSORACOMは、SIMカードに加えて、IoTの通信を行う上での共通基盤、標準基盤として形成されています。SORACOMを使えば、10円から使え、データ通信量は使った分だけ従量課金で、スモールスタートでき、さらに端末、回線を一括管理できて、運用が楽になる。なおかつ、SORACOMを使っていろいろなビジネスを自由自在にしていただけます。SORACOMを組み込んだサービスを自由に値付けをして、売っていただいていいというような考え方になっています。

SORACOMのサービス提供の仕組み

どうやって我々はこのSORACOMを提供しているのか。これは、大手携帯通信事業者様の高品質な基地局をお借りして、我々自身はそこから専用線でAWSのクラウドの上に線を引いて、そしてその上で携帯通信のコアネットワークと呼ばれるインフラ部分を全てソフトウェアで手作りし、いわゆる携帯通信業者の基地局とAWSクラウドで、バーチャルキャリアを実現しています。こういう非常にユニークなやり方で、低価格でフレキシブルなIoT向けの通信を提供しています。これがSORACOMです。


おかげさまで、たくさんアワードもいただいて、日本で4,000以上のお客様にお使いいただいています。お客様は大企業様から中小企業、それからベンチャー企業まで幅広い企業サイズのお客様、いろいろな業界にお使いいただいています。

さまざまな業界のSORACOM利用事例

 いくつか面白い事例を、ご紹介させていただきたいと思います。


まず十勝バス様。今、全てのバスにSORACOMを入れていただいていて、バスの位置情報を常にクラウドに送っています。その情報を使って、バスに乗られるお客様向けにスマートフォンのアプリを提供して、お客様にリアルタイムのバスの位置を使った路線案内を提供しています。なので、バスが20分遅れてるとかっていうのも分かります。北海道なので、雪で遅れることも多いので、お客様にもとても好評と伺っています。


パルコ様。カメラセンサーをイベント会場の入り口に置き、このカメラセンサー、特殊なカメラでお客様が入ってきた画像分析をして、男性なのか女性なのか、年代、分かるようになっています。そして、そういったプロファイル情報だけクラウドに送って、客層分析をリアルタイムでやります。10時に250人が来られて、そのうち60パーセントが女性でした、みたいな分析ができるシステムですね。


インフォミクス様。太陽光発電の監視の回線にSORACOMを使っていただいています。最近、家庭用の太陽光発電、屋根の上に取り付けるということも広まっていますので、太陽光発電壊れやすいですね。埃がかぶったり、パネルが壊れたり。そういったときの監視することによって、壊れたらすぐに分かるというような形になっています。


 JapanTaxi様、日本交通様のITの子会社になりますけれども、タクシーに乗られている平均時間って18分ぐらいあるんですね。その車内の空間っていうのを、もっと有効活用したいということで、後部座席にタブレットを付けられて、広告配信をされるようになりました。もともとはタクシーの運転手さんが手で動画を交換されていたのですけれども、SORACOMを使っていただいて、自動的に、しかも深夜の安いデータ通信料金帯のときに、広告動画を入れ替えるということを実践されています。

楽天Edy様。楽天Koboスタジアムにおいて、野球の試合のときにビールの売り子さんがビールを売ってるんですけれども、そのクレジットカード決済端末でSORACOMを使っていただいています。こうすることによって、試合のときしか、この端末を使わないので、回線料金下げれますし、尚且つ誰が使っているのかという把握もできるので、セキュリティも高められるという事例です。


 東海クラリオン様。これはドライブレコーダーですね。車のフロントガラスに付けておいて、運転している状況を動画で撮っているようなデバイスですけれども、ここに回線が入っているので、例えば、事故に遭ったときに自動的に動画を送信することもできますし、内臓されている加速センサーみたいな情報を使って安全運転をしているかどうか。こういった把握ということもできるようになっています。

IoTをまずやってみる、トライアルや研究開発での利用

今までの事例というのは本番ビジネス、実際のプロダクトで使われている例ですが、最近如実に感じているのが、IoTというキーワードが広まってきて、まずうちもやってみたいとか、こういう実証実験をしてみたいといったニーズの高まりです。このビジネスが本当に成り立つのかどうか試してみたい、といったご要望が非常に多いんですね。こういったところでも、SORACOMを活用いただいている事例が増えてきています。


例えば、パラマウンドベッド様。この乳児見守りシステムです。赤ちゃんの動きとか、重さとか、こういったセンシングデータを、急激な体調変化や、育児成長の把握するためにSORACOMを使っていただいている例です。


それから、ヤンマー様。工場のフォークリフトの遠隔監視であったり、グリーンハウスの状況の監視、こういったところでもSORACOMをお使いいただいています。


 それから日通総合研究所様。日通総合研究所様は、「ろじたん」と呼ばれる倉庫作業分析のサービスを提供されています。倉庫の中ではたくさんの作業員の方が働いていたり、いろいろなものが動き回っています。この業務端末を付けた作業員の方が、作業をする度にポチポチと端末を押していくと、どの作業にどのくらいの時間を使ったかというのが記録されていきます。これらのデータを使って、効率化の推進やコンサルティングを提供されています。そこでSORACOMを使っていただき、60%のコスト削減に至ったケースもあるということです。

イノベーションで社会を変革するスタートアップでの利用

その他にも、最近新しいテクノロジーをうまく使いこなすと、これまで絶対実現できなかったようなことが、ビジネス的にもできるようになるという事例が増えています。こういうことをやっている会社の中には、創業間もないスタートアップと呼ばれるベンチャー企業も多くあります。今日はスタートアップをいくつか紹介させていただきたいと思います。


まず、チカク様の「まごチャンネル」というサービス。おじいちゃん、おばあちゃんはスマホを扱える人少ないですよね。でも、孫の顔は見たい。テレビだったら扱えるということで、テレビに白いセットトップボックスを付けていただくと、テレビの上でいつでも孫とか子供の画像、動画を見ることができるといういうサービスです。どうやってるかっていうと、このセットトップボックスにSORACOMが入ってるので、子供が孫の写真を撮って、おばあちゃんに見せたいと思ってシェアすると、自動的にテレビのセットトップボックスに共有されて、おばあちゃんはテレビの上で孫の動画を簡単に見ることができます。


ネッサジャパン様。「Nessa」という補聴器サービスを提供されています。今、40代以上の方の6人に1人が難聴の問題を抱えているというふうに言われているんですけれども、この補聴器、調整が難しかったり、きちんと使いこなすのが難しいんですね。ネッサ様では、補聴器のサービスだけでなくて、オンラインサポートを提供するホームリモートボックスを提供されていて、この通信機能にSORACOMのSIMが入っています。いつでも補聴器の具合の調整とか、問題があったときにサポートを受けることができると。これを定額で提供されています。


Liquid様。こちらはカード決済において、カードを持ち歩かなくても、手ぶらで、指紋で決済できるという仕組みを提供をされています。例えば外国人の旅行者が熱海に来たときに、熱海で歩き回っているときに指紋で決済できてしまうとか、そういう手ぶら決済をする際の専用端末にSORACOMを使っていただいて可能にしています。


ウミトロン様。これは非常に面白いスタートアップで、魚の養殖事業者向けに養殖生産の効率化サービスを提供しています。魚の養殖事業者様は、平均的に6個から7個、生け簀を持たれているそうです。その中で一番お金が掛かっているのは餌代です。月に平均2000万円ぐらい掛かるらしいですね。これ、10パーセント削減できれば、200万円浮いてくるということで、このウミトロンさんは、魚の魚群センサーにSORACOMを使って、魚の魚群を解析することによって、どのタイミングで、どれぐらい餌をあげればちょうどいいのかっていうのを常に推薦していくようなサービスを提供されています。


 様々な業界で、IoT活用は進み、SORACOMをご利用いただいています。

ソラコムの戦略(1)運用コストを削減し、お客様に低料金で還元

私達は、いろいろなお客様にSORACOMを使っていただいて、たくさんフィードバックをいただいて、またSORACOMのサービスを進化させて、またたくさんのお客様に使っていただくということを心掛けています。今日はソラコムの戦略を5つ紹介させていただきたいと思っております。まず1つ目、我々の運用コストを削減して、お客様にできるだけ低料金で還元していくという考え方についてです。


  SORACOM Airの料金は初期費用、1枚当たり954円。それから基本料金としては、データを流し始めると1日10円、データ通信料金は所有されている枚数に限らず、ご利用になった総量分を、月末締めで毎月お支払いいただく、従量課金モデルになっています。

SORACOMはIoTに特化した料金体系とご説明しましたが、今まで紹介した事例で、どれぐらいのコストになるかをすこしご紹介します。


 十勝バスさんの例のような、位置データの取得のケースは、月300円ちょっとです。楽天Edyさんのような決済端末のケースでは、決済を1日1,000決済したとしても月350円ぐらいです。サイネージとしての利用、これはJapanTaxiさんのようなケースでは、広告の動画配信では動画データは結構重いのですが、深夜帯をうまく使うことで月400円弱でいけます。モバイルワーカーが業務端末として使うケース、例えば日通総合研究所さんのケースですね。このケースでも、300MBくらいのデータであれば、500円弱ででき、データ量に応じて非常に安い価格で使えるようになっています。

ソラコムの戦略(2)お客様のニーズに基づいた迅速なサービス開発

次に、お客様のニーズに基づいた迅速な開発についてです。


 例えば、IoTにおいては多くのデバイスを扱うので、その運用を楽にしたいといった要望があります。また、IoTに取り組む場合も試行錯誤が必要です。ですので、すぐに試せる、使える、止められる、こういったところがプラットフォームにも求められると考えています。こういったフィードバックをいただいて、どんどんどんどんサービス開発、新機能開発をしております。サービス開始後の1年間を振り返ると、10個新サービスをさせていただいて、また、それぞれのサービスも28回新しい機能を発表させていただいています。

すこしSORACOMのサービスもご紹介したいと思います。特徴的なものとしては、「セキュリティ」。IoTだと、モノからクラウドにデータを蓄積していくという特徴がありますが、これまではクラウドにデータを送信する時にインターネットを経由するため、セキュリティに不安がありました。


これ、どうやってセキュアにデバイスを繋ぐか、お客様のサーバーまでデータを送信する際に、いろいろな盗聴の恐れとか、認証情報の格納方法や、暗号化など様々な検討事項があります。我々はこういったところをサポートするサービスを、どんどん開発しています。

今特にご注目いただいているのが、「SORACOM Canal」Canal(運河)という意味をもつサービスです。AWSは、年間の売り上げ1兆円を超えているクラウドサービスで、大企業でも利用する企業が増えています。多くの企業はこのAWSを使うときに、VPCという閉域網で、ここにサーバーを建てて使っています。この「SORACOM Canal」を使うと、それぞれの企業さんの特定のVPCに閉域網でつなぐことができます。


 こうすることによって、どこでもつながるモバイル回線から上がってくるデータを、直接クラウドの閉域網の中に送信できるというサービスです。このサービスの特徴は、データ送信の際に、1回もインターネットに出てないことです。1回もインターネットに出てないのに、クラウドにデータが閉域網を通って直接入っていきます。このセキュリティの安心感が好評で、今とても多くのお客様に使われています。

もう1つ、SORACOM Funnelというサービスをご紹介します。Fuunelとは「漏斗」という意味です。IoTを実際にやる時、皆さん困ることがあります。それは何かというと、ものすごい数の端末から不定期にデータが上がるっていうことは、どれぐらいのスペックとかのサーバーとかを用意すればいいか、全く予想がつかないということです。こういったところで非常に便利なサービスが、クラウド各社から出ています。代表的なサービスが、Amazonが出しているAmazon Kinesis Stream、それからKinesis Firehose、それからAzureのEvent Hubs、このあたりのサービスです。このあたりのサービス、一言で言うと、ダムのようなサービスで、どんだけの数の端末からデータを送ってきても、まず一旦データをためておくことができるサービスです。これらを活用すると、システム設計が非常に楽になります。


 しかし、KinesisとかEvent Hubsを使う場合、開発者は使い方を覚える必要があります。プログラミングの知識だけではなく、認証などのサーバーの知識も必要です。この「SORACOM Funnel」を使っていただくと、こういった手間のかかる部分を、省略できます。取りあえずSORACOMにデータを送れば、SORACOM側でアダプターを提供しているので、ボタン1つでKinesisにもEvent Hubsにもデータを送り込むことができます。エンジニアにとっては、開発、運用が非常に楽になります。

 もう一度「SORACOM」で何をしているかをご説明すると、デバイスとクラウドを直結させて、ここを閉域網でつないでいます。つまり、インターネットに1回も出ません。


 モノ、インターネット、クラウドっていう流れではなくて、モノからクラウドに直接、もちろんインターネットに出たければ、出ていい。そこは自分でコントロールできるという、こういうような仕組みになっています。これが皆さんに注目されている理由かなと思っていまして、まさにパラダイムシフトと言えると思います。
 現在、IoT通信プラットフォーム「SORACOM」では、8つのサービスを展開しています。「SORACOM Air」という主力サービスの上に、ネットワーク系のサービス、AWS上のサーバー同士を閉域でつなぐ「Canal」、専用線接続する「Direct」、仮想専用線(VPN)で接続する「Door」があります。それから、デバイスに、セキュアに直接インターネットからアクセスできる、デバイスLANサービスを提供する「Gate」。その上には、アプリケーション系のサービス。データ転送支援する「Beam」、クラウド連携をスムーズにする「Funnel」、認証サービス「Endorse」。こういったサービス全て、従量課金で、ウェブの上で管理できてAPIが提供されている。これが「SORACOM」のプラットフォームです。

ソラコムの戦略(3)新テクノロジーを、すぐに使える形で提供

次の戦略は、新しいテクノロジーへの取り組みについてです。IoTのエリアでは、どんどん新しいテクノロジーが出てきますので、これをできるだけ使いやすい形で提供するというのが、我々の役目だと思っております。


5月には、LoRaWANへの事業の参入を発表しました。LoRaWANをご存じのない方に簡単に説明すると、いわゆる免許不要なUnlisensed Bandを使った無線テクノロジーです。基地局となるゲートウェイをご自身で設置できます。それを置くと、数キロにわたって商業のデータ通信ができます。また、このモジュール自身は乾電池で数年動きますし、低価格で入手できます。ただし、通信速度が非常に遅いというデメリットがありますね。なので、モバイル通信のように動画とか画像を送信するような用途には向いていません。少量のデータを送る用途では使いどころがあります。そこで、「SORACOM」プラットフォームでは、モバイル通信だけではなく、このLoRaも提供を開始しています。M2Bコミュニケーション様と協業し、LoRaのテクノロジーのゲートウェイとモジュールを両方提供しています。


 ゲートウェイに「SORACOM Air」が入っているので、どこでも基地局を設置できます。また、「SORACOM」のウェブの管理画面で、LoRaモジュールも管理できますし、データを転送するのも先ほど紹介しました「Funnel」のようなクラウド連携サービスをご利用いただけます。デバイスとコンサルテーションを一式にした「SORACOM LoRaWAN PoCキット」は、7月に発売開始し、たくさんのお客様にお使いいただいてます。

ファームノート様では、農場の、牛の管理に使っていただいてます。首のところにLoRaモジュールを付けると、位置情報を数分ごとに送ることによって、例えば牛がどこを歩いているのか、乳を搾乳するときに、どうやって戻ってくるのかトラッキングできます。牛乳が沢山でる牛はどういう生活をしているのか?、今まで取れなかったデータが取れるようになるというサービスですね。


 博報堂アイ・スタジオ様では、「TREK TRACK」というサービスを発表されました。このサービスは携帯通信網が入らない山でもLoRaWANを使うことによって、登山者の位置情報を定期的に送ることで、山のどこに登山者がいるのかっていうのを3Dマップ上で可視化します。このサービスは、来年から本格運用されるということで、今実証実験をしていただいております。

ソラコムの戦略(4)グローバルなプラットフォーム展開

4つ目の戦略は、グローバルなプラットフォーム展開です。


 我々、春先に30億円資金調達させていただいて、トヨタ様、KDDI様ともグローバル通信プラットフォームを活用検証していくというリリースも出させていただきました。7月にSORACOMのプラットフォーム全体を日本国内だけでなく、海外で使えるようにするという発表をし、検証キットとして、このグローバル用SIMというものを提供しはじめました。これは、1枚のSIMで120の国と地域でつながるというSIMなんですね。これまでの「SORACOM」と同等の機能が使える上に、どの国で繋がっているのか、どの基地局でつながっているのか、そういった情報も取れるようになっています。

こちらもいろいろなお客様に使っていただいてます。典型的なご利用事例としては、日本のIoTが世界へ出ていくというケースです。日本でSORACOMを使っていただいていて、それを海外展開したいというときに、SIMを挿しておけば、同じ仕組みでグローバルで使えます。


Safecast様というNPOでは、放射線情報をSORACOMを使ってクラウドにデータを集め、地図と放射線値をマッピングしてオープンマップとして公開されています。現在、アメリカでも既に利用開始されています。世界中にサービスが広がっていっています。


 KAKAXI様。こちらは、農場のセンシングデータをクラウドに上げて、どんどん農作物を育てる効率化、情報共有をされています。温度センサー、湿度センサー、それから画像のデータを取得し、クラウドに上げることができるようになっています。

ソラコムの戦略(5)エコシステムを重視

IoTは、総合格闘技的な要素があると思っています。IoTを実現するには、通信だけでも駄目で、端末のハードウェア、それからクラウドの技術、機械学習、AIといったような技術、それからデータを可視化する技術、それからセンシングをしたもので物を実際に動かすアクチュエータの技術、たくさんの要素技術が必要です。SORACOMは通信の部分に特化していますが、IoTとしては、パートナー様と一緒にエコシステムを作っていくということを非常に重視しています。


 SORACOMのパートナープログラム「SORACOM Partner Space(以下、SPS)」では、現在230社のパートナー様に参入いただいて、事例や実績をお持ちで認定を取っているパートナー様は52社あります。こういったパートナー様にいろいろなサービス、ソリューションを展開していただいています。

デバイスパートナーは、ゲートウェイとかルーターなどの通信モジュール・デバイスを提供し、ソリューションパートナーは、データの可視化や、予兆検知、セキュリティなどのクラウド上のソリューションを提供します。インテグレーションパートナーは、お客様の要望にあったIoTシステムをインテグレートして提供します。ネットワークパートナーは、ネットワークを提供します。認定済のデバイスも、今50種類以上になりまして、いろいろなものでSORACOMが動作検証済みです。


開発者のコミュニティも非常に活発になってきておりまして、東京、大阪、福岡、たくさんの所で会社の枠を越えて開発者の中でIoTのノウハウを共有していこうという活動があります。ソラコムでは、こういった活動もサポートしています。

最後、新発表にあたり、背景をご説明します。「SORACOM」の何が競争力なのか考えてみますと、「クラウド上で作った携帯通信コアネットワーク」これを持っていることが、SORACOMだけが持つユニークな競争力であると考えています。私達は、これのことを「SORACOM vConnec Core」と呼んでいます。


このたび、KDDI様と一緒に共同発表させていただきます。KDDI様が本日発表する、IoT向けの回線サービス「KDDI IoTコネクトAir」において、「SORACOM」と「SORACOM vConnec Core」をご利用いただき、共同開発させていただきました。


 この後、KDDI株式会社 ソリューション事業本部企画部長の原田様にご登壇いただきました。KDDI様との取り組みは以下のプレスリリースをご参照ください。



IoT向け回線サービス「KDDI IoTコネクト Air」を提供開始!
~IoTに特化したシンプルな料金体系と、ウェブで簡単に申し込みと管理ができる機能を備え、お客さまのIoTビジネスをサポート! ~

世界中のヒトとモノをつなげ共鳴する社会へ

今日は、ソラコムの5つの戦略についてお話しさせていただきました。


特にモバイルとクラウドをフュージョンさせた、IoTの領域というのは、我々やることがたくさんあるというふうに思っております。ですので、これまでどおり、お客様のフィードバックをいただいて、どんどん新しいSORACOMサービスを開発していきたいと思っています。


それからLoRaWANのように新しい無線テクノロジーというものを、これからも出てくると思っております。これもIoTがもっと活性化していくように、新しいテクノロジーを取り込んで、それをお客様が使いやすい形で提供していきたいと考えております。


 グローバルも、日本のお客様が海外に出ていくとき、それから海外のお客様が日本に来るとき、同じようなプラットフォームを便利に使えるように。こちらも領域、地域、エリアを広げていって、使いやすい形にしていきたいと考えています。


 また最後、大きな発表をさせていただきましたが、IoTの回線サービスをKDDI IoTコネクトAirという形で提供させていただくことになりました。こういった形で、今回KDDI様という非常に強力なパートナー様と一緒に新しい発表ができたことを非常に嬉しく思っております。


 我々、創業当初から「SORACOMが出てきたことで、IoTが非常にやりやすくなった、IoTでいろんな新しいチャレンジができるようになった」と言われたいと思ってやってきました。これは、まさにクラウドのこの5年の変遷と同じで、クラウドの出現と進化によって、UberやAirBnBなど、たくさんの新しいサービスやビジネスが産まれました。これと同じことを「SORACOMが出てきたのでIoTがやりやすくなった」という形で評価されるように、全力を尽くしていきたいというふうに考えております。


 日本から、世界から、たくさんの素晴らしいIoTサービスやIoTプレイヤーがが生まれていくことを願い、これまでどおり、チーム一丸で邁進していきたいと思います。

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